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フランウッド 社が、WOODY IWAKI 2023のパネルディスカッションに登壇しました。
パネルディスカッションは、「カーボンニュートラルの実現に向けた森林と企業と行政のパートナーシップについて」というテーマで行われ、代表の高橋がファシリテーターを行いました。
当日のチラシはこちら▶️

開催日時2023年10月8日(日) 10:00-12:00
場所小名浜公民館
登壇者1ファシリテーター紹介
髙橋 ひかり氏(株式会社フランウッド 代表取締役社長CEO)
 ・スギやヒノキの耐久性を格段に向上させる技術を開発している
  
2パネリスト紹介
① 安齋 好太郎氏(株式会社ADX 代表取締役)
 ・二本松市在住の建築家で、森の可視化・価値化・活用に取り組んでいる
  
② 藤野 正也氏(福島大学 食農学類 生産環境学コース 准教授)
 ・森林を持続的に利用していくための技術を、経営工学の観点から研究している
 
③ 山﨑 和昭氏(福島県木材青壮年協会いわき支部長、和田木材㈲代表取締役)
 ・いわき市産木材の利活用に積極的に取り組んでいる
 
④ 佐藤 不二夫(いわき市農林水産部次長)
・林務課長在職時、いわき市豊かな森づくり・木づかい条例の制定に携わる
主催いわき市
後援福島県
主管福島県木材青壮年協会いわき支部

​【日本最大級の木材・森林イベント】木づかいシンポジウム(別称SUSTAINABLE FOREAT SYMPOSIUM)にニッポニア木材社が登壇しました。

 2022年10月7日(金)東京日本橋の室町三井ホールにて、株式会社Spero、一般社団法人全国木材組合連合会(全木連)、株式会社GiveFirstによる共同主催にて『木づかいシンポジウム2022』が開催されました。

  本シンポジウムは、2021年10月に施行された「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利に関する法律」(通称:都市(まち)の木造化推進法)を背景に、建築物、特に中高層ビルの木造化・木質化を推進するために、開催されたものです。

 日本の国土の約3分の2を占める森林は、そこから生まれる木材を建築物等に活用することで、資源の循環、地球温暖化防止、国土保全に繋がることが期待されます。特に、SDGs、カーボンニュートラル2050、ESG投資などへの対応が求められるなど、事業者においても環境や社会への貢献度が企業価値を左右する時代が訪れています。 

 開会式では、野中厚農林水産副大臣が挨拶したほか、森林を活かす都市の木造化推進議員連盟幹事長の金子恭之氏、CLTで地方創生を実現する議員連盟会長 石破茂氏、元農林水産大臣政務官の下野六太氏など国会議員も相次いで登場し、国政レベルでも都市の木造化・木質化が重要課題になっていることを強調しました。

 また、ウッド・チェンジ協議会の隅修三会長が基調講演を行ったほか、林業振興から木材利用、まちづくり、投資、新規ビジネスモデルまで幅広くカバーする7つのテーマを設定し、ウッドデザイン協会の隈研吾会長をはじめとし、三井不動産、三菱地所、ヒューリック、竹中工務店、大林組、住友林業、 日建設計、ディベロッパー、ゼネコン、施主、設計事務所、商社、政策当局者、建築家、法律の専門家など、林業・木材産業に関わるプロフェッショナルがパネルディスカッションを通じて議論を深めました。

ニッポニア木材社は、[パネル7] 木づかいベンチャー特集に登壇。以下のセッションで、フランウッドの魅力と、フランウッドの描く中山間地域の経済循環モデルについて、アピールしました。

【ニッポニア木材社が登場した、パネル7】

[パネル7] 木づかいベンチャー特集 〜新たなビジネスモデルと技術
塩地 博文 ウッドステーション株式会社 代表取締役会長
加藤 正人 信州大学 農学部 教授
安齋 好太郎 株式会社ADX 代表取締役兼CEO
ニッポニア木材株式会社 
モデレーター:高橋 ひかり 株式会社Spero 代表取締役


概要:斬新な発想や技術から木づかいを促進するベンチャー特集のセッション。
木造化を推進する上で、技術やビジネスモデルなどにおいて、先進的な取り組みを行うベンチャー企業の取り組みを紹介する。大型パネルと建設の工業化、国産針葉樹のハードウッド化、森林計測などの技術は、日本の森林・木材業界の切り札となるのか。また、ベンチャー企業が考える持続可能なモデルとは何か。

木づかいシンポジウム(別称:SUSTAINABLE FOREAT SYMPOSIUM)特設サイト

スギやヒノキを脱炭素の旗手に!独自技術で生まれ変わらせる

 「フランウッド」が、森林ジャーナリスト田中淳夫さんによるyahoo記事で取り上げられました。以下、転載。

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 その木材は、スギやヒノキの1.7倍以上の炭素を固定する。しかもほとんど腐らずに、ずっと炭素固定を続ける。

 そう聞くと、すわっ、なんという木かと注目する人もいるかもしれない。実は、樹種はスギとヒノキなのである。日本にそれこそ山ほどある木と同じだ。ただし、少し加工する。その名をフランウッドと呼ぶ。

 具体的には、スギやヒノキに植物からつくったフルフリルアルコールを含浸させたものだ。この物質は細胞壁で化学反応を起こして、フラン樹脂が生成される。結果として細胞壁が分厚くなり水分は減少する。おかげで圧縮強度を増し、腐朽しづらく、割れや反り、縮みなど形状変化もしにくくなった。また重く濃茶色になる。木材内の炭素量が増えたおかげである。

 このように説明すると思い出す人もいるかもしれない。そう、私は以前同じ原理の「ケボニー化木材」を「針葉樹材を広葉樹材にする」技術が誕生したと紹介したことがある。

針葉樹材が広葉樹材に化ける!これは林業イノベーションだ

 これはノルウェーのケボニー社がラジアータパインなどの加工木材だった。この記事で、スギでもできる可能性に言及したが、現実には生成時間が4倍以上かかってしまい、製品の性能にもバラツキが多く出るなど量産には不都合な面も多く、なかなか実用化が進まなかった。

 そこでスギやヒノキに特化してフルフリルアルコールを含浸させフラン樹脂化させる技術の開発が、日本で進められてきた。

スギのハードウッド化に成功

 スギやヒノキに最適の方法を突き詰めて、含浸方法や触媒を工夫することで、ついに完成したのがフランウッドである。

 それはケボニー化よりも簡単な工程で、完成した製品もケボニー化木材よりずっと性能がよく、まさにハードウッド(広葉樹材)だ。芯まで含浸するので炭素固定量も増えた。手がけたのはニッポニア木材株式会社である。

 なおスギもヒノキも日本固有の木材だから、海外企業が製造に参入するのは難しいだろう。

フランウッド化の原理(ニッポニア木材提供)
フランウッド化の原理(ニッポニア木材提供)

 ちなみに現時点では、フルフリルアルコールは中国からの輸入に頼るが、その国産化にも取り組んでいる。原料は、木材に含まれるヘミセルロースを使う。つまり木材から取り出し合成したものをまた木材に注入するわけだ。もちろん石油系や重金属系の物質は含まれない。この生産が軌道に乗ると、日本国内で原材料も加工もすべて完結する。

優れた炭素固定性能を活かす

 フランウッドは、商品としての可能性も非常に大きいが、ここは脱炭素の観点から見てみよう。

 まずフランウッド自体が多くの炭素を含むのは説明した通りだ。これまでの実験では、1立方メートルのフランウッドの場合、スギ材は1219kg、ヒノキは1315kgの炭素(CO2換算)を固定することがわかっている。

 同時に腐朽しづらい点も、CO2を出しにくいことを意味する。

 現状の木製品は、実は寿命がそんなに長くない。木造建築物は手入れを怠ると、すぐに腐朽するので改修が求められる。防腐剤を使用しても限界がある。合板も数年で廃棄になることが多い。紙製品も同様。平均すれば1年もせず捨てられるだろう。ましてや昨今増えている用途である木質バイオマス燃料など一瞬で燃やしてCO2を排出する。

 その点フランウッドは、建築物の外装、内装、デッキ、エクステリア……とさまざまな用途で長く使われることが見込め、メンテナンスフリーで保てる。さらに土壌改良用に地中に打ち込む木杭や、海に沈める漁礁などとして無酸素環境に置かれたら、最低でも数十年、おそらく半永久的に炭素を固定し続けるだろう。

スギのフランウッド。熱帯地域で採れるチーク材に似た風合い。(ニッポニア木材提供)
スギのフランウッド。熱帯地域で採れるチーク材に似た風合い。(ニッポニア木材提供)

 さらにフランウッドの性能や木肌の表情は、スギはチーク材、ヒノキはウォルナット材に似ているので、そうした熱帯産高級木材の代替にもなる。つまり、問題になっている熱帯雨林の破壊的伐採を止める一助になりうる。また市場は日本だけでなく世界中に広がるだろう。

 付け加えれば、高級な熱帯産木材と同価値とされるから、価格は現在のスギ材の5倍にできる。その分山から原木を高値で買い取れるわけだ。十分に山に還元することができれば、苦境の林業を支えられると期待されている。

 フランウッドの製造は、現在パイロットプラントがようやく稼働し始めたばかりだ。より安定的な生産工程の確立など、まだ課題は少なくないが、脱炭素と林業再生の有力な武器となるのではなかろうか。

田中淳夫

森林ジャーナリスト

日本唯一にして日本一の森林ジャーナリスト。自然の象徴の「森林」から人間社会を眺めたら新たな視点を得られるのではないか、という思いで活動中。森林、林業、そして山村をメインフィールドにしつつ、農業・水産業など一次産業、そして自然界と科学(主に生物系)研究の現場を扱う。自然だけではなく、人だけでもない、両者の交わるところに真の社会が見えてくる。著書に『鹿と日本人 野生との共生1000年の知恵』(築地書館)『絶望の林業』(新泉社)『獣害列島』(イースト新書)など。Yahoo!ブックストアに『ゴルフ場に自然はあるか? つくられた「里山」の真実』。最新刊は森の常識に異論を突きつけた『虚構の森』(新泉社)。

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